精神安定薬(トランキライザー)

 精神安定薬トランキライザー)とは,正常な精神機能への影響がなく,緊張状態を緩和し,不安状態を消失させる薬の総称です.
 
 抗精神病薬メジャー・トランキライザーと言います.これは,強い不安感や緊張を取り除き,気分を安定させる作用がある薬です.「抗精神病」とついているので焦るかもしれませんが,マイナーより強い作用を持った薬だと思えばよいのではないのでしょうか?


 また,抗精神薬には定型コントミンヒルナミンセレネースなど)と非定型リスパダールルーランジプレキサなど)があります.違いを大まかに言いますと,非定型の方が脳内の多様な受容体に作用するところにあります. さらに非定型にはSDAリスパダールルーランなど)とMARTAジプレキサなど)に分かれます.SDAはセロトニンドーパミン受容体に働き,MARTAはセロトニンドーパミンだけでなく多くの受容体に働きます.

コントミン

商品名(一般名)   コントミン(塩酸クロルプロマジン錠)

薬価: 9.20 円 / 50mg1錠 

特徴: 強力な精神安定剤です.主に統合失調症などの精神病に伴うさまざまな症状(妄想,幻覚,興奮など)に有効ですが,効果としては鎮静作用の方がはるかに強い薬です.そのため,興奮や不眠症状に処方されることが多くなっています.なお,躁病,うつ病などでも使用されます.

副作用: 血圧降下,とくに薬の使い始めの起立性低血圧や,ときに心機能の異常,アレルギーとして,骨髄機能障害,あるいは手のふるえ,筋肉のこわばり,よだれといったパーキンソン様症状などがあります.

コントミン50mg  この薬は主に統合失調症の場合によく使用される薬で,妄想や幻覚を抑える働きをします.またうつ病などでも使用され,強い興奮があるときに,睡眠前から服用を始めます.さらに日中にも処方されることがあります.ただし,高用量を安易に使うのは控えるべきで,個人の判断で増減するのでなく,専門医の指示を仰ぐ必要があります.

ヒルナミンとレボトミン

商品名(一般名)   ヒルナミンレボトミンマレイン酸レボメプロマジン錠)

薬価: 6.40 円 / 5mg1錠(両方とも) 

特徴: 強力な精神安定剤です.脳の中枢に直接作用して,統合失調症などの精神病に伴うさまざまな症状(幻視、幻覚など)や躁病,うつ病などを改善する作用があります.

副作用: 血圧低下や頻脈が起こることがあります.また,光線過敏症,不安,いらだち,よだれ,筋肉のこわばり,手のふるえ,めまいなどが起こることがあります.強い薬なので,他の安定剤との飲み合わせに注意がいります.降圧薬,抗コリン作用のある薬(三環系抗うつ薬など),リチウム(リーマス)などと相互作用して,めまいや吐き気が起こることがあります.

ヒルナミン5mgレボトミン5mg この薬は主に統合失調症の場合に,妄想や幻覚を抑える働きをします. 筆者は以前,些細なことから自殺未遂をしました(→4月22日).すぐ発見され,親の判断でAクリニックに緊急で見ていただいたとき,処方されたのがヒルナミンでした.ヒルナミンで脳を眠らせて思考力を落とし,自殺念慮を抑えよう,ということです...
  気分の優れない数日は, 朝昼晩10mgずつ飲むのですが,まったく脳が眠ってしまうという感じで,1日中寝てしまうほどでした.
 筆者はリーマスも飲んでおり,両方飲むのは腸の運動を妨げて便秘が酷くなったりと困ったので,気分が安定してからは,朝昼の量を減らしてよいと先生の指示がありました.当時はほとんど,夜10mg飲むことで不安定な時期を乗り切りました.

セレネース

商品名(一般名)   セレネースハロペリドール錠 )

薬価: 12.20 円 / 3mg1錠 

特徴:  強力な精神安定剤で,脳の中枢に直接作用して,気分を落ち着ける作用があります.統合失調症にかぎらず、躁病や精神病に伴う興奮,幻覚,妄想などの症状を改善する作用があります.

副作用: 光線過敏症,食欲不振などの胃腸症状,筋肉のこり,よだれ,発汗,動悸,不安で落ちつかなくなる,うつ症状などが起こることがあります.
セレネース3mg リスパダール同様,統合失調症などで幻覚,妄想がある場合に処方される薬です.若干リスパダールよりも,副作用(口が渇く、眠気)が強いようですが,効き目も強いそうです.
 知人はリスパダール,セレネース双方を処方されていますが,症状の軽い人や薬と相性が良くない人は,どちらか一方の薬に統一しているようです.なお,リスパダールが糖尿病の人には慎重投与のため,リスパダールをカットしセレネースを増やした人もいます.
 これら,メジャー・トランキライザーは効き目が非常に強い反面,副作用も強いため,うつ病などでは多用されることは無いようです.ただし,希死念慮など不必要に思考力が働いてしまう場合,これらの薬を併用して,精神のバランスを整える方向へ持っていくようです.

リスパダール

商品名(一般名)   リスパダールリスペリドン錠)

薬価: 45.60円 / 1mg1錠  98.2円 / 1mg/ml(内服液)

特徴:  気持ちの高ぶりや不安感をしずめるほか,停滞した心身の活動を改善する作用があります.また幻覚や妄想をとる,軽くする,不安感や興奮状態をおさめる,意欲を高めるといった効果があります.そのような作用から,統合失調症にかぎらず,強い不安感や緊張感,抑うつ状態などいろいろな精神症状に用いることがあります.
副作用:  比較的多いのは,血圧の低下,立ちくらみ,めまい,眠気,口の渇き,便秘,尿が出にくい,動悸,体重増加などです.人によっては血糖値が上昇してくることがあります.もともと,糖尿病のある人や血糖値が高めの人,太りぎみの人は,定期的に血糖値の検査を受けるよう心がけてください.また飲み始めの強い「立ちくらみ」には十分注意してください .
リスパダール1mg リスパダールは統合失調症や妄想症,反応性精神病などで主力とされる向精神薬です.海外のデータでは,非定型の中で幻覚・妄想などの陽性症状に対して,セレネースよりも高い有効性を示しました.また再発率もセレネースより低くなっています. そこで,統合失調症の治療ガイドラインでは,急性期の第1選択薬とされており,アメリカでの処方シェアでは第1位だそうです. 統合失調症などでは,多くのメジャー・マイナートランキライザーを組み合わせて患者さんのメンタルケアにあたるようです.
 他にもうつ病神経症などでも使用されることもあります.筆者の場合,過去の悪い記憶がフラッシュバックして体調が悪化するときに,頓服として内服液のリスパダールを処方されたことがあります.錠剤よりも内服液の方が効き目が早いのですが,薬価が高いのがちょっと・・・というところでしょうか.また,女性の場合,リスパダールといった向精神薬の使用で,高プロラクチン血症になる場合があります(筆者がなりまして,リスパダールからエビリファイというお薬に変更になりました).

ジプレキサ

商品名(一般名)   ジプレキサオランザピン錠)

薬価: 275.40円 / 5mg1錠 

特徴: 強力な精神安定剤です.統合失調症に伴う陽性症状(妄想,幻聴,混乱,興奮)の改善に加え,従来では改善が難しいとされていた陰性症状(感情鈍麻,思考・意欲減退)にも効果が期待されています.その効果は躁病,うつ病などを改善するためにも期待されています.

副作用: 眠気,便秘,口が渇いたり,ふるえ,ソワソワして落ち着かなくなる,めまい,ふらつきなどが現われる場合があります.また重大なのは,体重増加の可能性が高いこと.血糖値が上昇するため,糖尿病の方は適用できません.

ジプレキサ5mg この薬はリスパダールの後続版として開発された抗精神薬です.気分を調整する作用があるので,統合失調症のみではなく,強い不安感や緊張感,気分の停滞など,様々な精神状態の改善に使用されます. 筆者はリーマスを使用しているため血液検査をしました.血糖値の値から糖尿病ではないと判断.そのとき医師にこの薬を勧められました. この薬はリーマスのように抗うつ薬の効果も高め,メイラックスのように抗不安作用もあり,ヒルナミンのように妄想などを抑えてくれる.それならいっそ,これら3種類の薬をジプレキサひとつに統合してみよう,ということなのです. なるほど〜!ジプレキサは寝る前に1回飲むだけでよいので,随分楽になります...が,値段が高いですよ先生... とりあえず,肥満気味なのも気になっているので,ジプレキサ導入は遠慮しました.

エビリファイ

商品名(一般名)   エビリファイ(アリピプラゾール)

薬価: 94.8 円 / 3mg1錠   179.6 円 / 6mg1錠

特徴: エビリファイ2006年1月から承認された,統合失調症の諸症状を改善させるお薬です.通常は,1日6~12gから使用を開始し,1日6〜24gを維持容量とし,1回または2回に分けて経口投与するタイプです.

副作用: 眠気,注意力や集中力・反射運動能力の低下があるため,自動車の運転など機械操作には注意を要します.前の治療薬からの切り替えの際,興奮,不眠,敵意,誇大性などの精神症状が悪化することがあるので,患者さんだけでなく周囲の方も良く観察をして下さい.そして,口渇・多飲・多尿などを伴う糖尿病性昏睡などの重い副作用が現れることがあるので,糖尿病の人には特に注意が必要です.

ebirifai.jpg エビリファイは比較的最近のお薬ですが,統合失調症の治療薬として認可されました.上記で述べているように,統合失調症の場合は6mg以上を使用します.
 しかしながら,(私の通う医師曰く),3mgと低用量で使用することで、抑うつ作用をもたらしてくれるとのこと.また,気分安定薬のように鬱の波を抑える効果も期待されているそうです.
 
 2009年夏までに,私自身の体調として,抗うつ薬では強すぎて,躁うつ病の軽い躁のような症状が明らかになりました.軽躁と鬱の波を抑えるために,デパケン(バルブロ酸)を使用していますが,こちらも大量投与はよくないため一定以上増やせません.
 
 そこで,気分安定薬のデパケンと,抗うつ薬トレドミンを減らし,このエビリファイを投入.抑うつ作用と鬱と躁の波対策に試しました.容量は1日1錠,3mgのみです.
 
 現在2009年8月末,1か月試しています.最初の2週間は落ち込み気味でしたが,後半は随分と良くなり日中の活動に支障はでなくなりました.
 
 ただ,「副作用」欄の治療薬の変更〜の点で触れた,脳の興奮状態や不眠に近いものは感じています.それが病気から来るのか薬の副作用なのかは,まだ定かではありません.分かっていることは,どん底の鬱状態からは,しばらく脱していることです.
  2015年春追記
 病名がうつ病から躁うつ病に変わって数年、このエビリファイを使用しています。エビリファイは躁うつ病の波を抑える効果が認められているそうで、最近は統合失調症の薬ですが、うつ病の波が激しい人や躁うつ病の人にも使用されるようです。
 
 また、エビリファイの良い点は、抗精神病薬の中でも高プロラクチン血症(生理が止まる症状)の副作用が無いということでしょうか。私は他の抗精神病薬を使用していたのですが、高プロラクチン血症になっていると分かり(これは婦人科で検査)、エビリファイしか現在使えない状態です。
 
  
>>他にも,注意点もいくつかあります。

PZC(ピーゼットシー)

商品名(一般名)   PZC・ピーゼットシーマレイン酸ペルフェナジン錠)

薬価:  9.40円 / 2mg1錠 

特徴: おだやかな精神安定剤です.統合失調症に伴う陽性症状(妄想,幻聴,混乱,興奮)の改善に加え,陰性症状(感情鈍麻,思考・意欲減退)にも効果が期待されています.その効果はメニエル症候群,うつ病などを改善するためにも使用されています.通常成人1日6〜24mgを分割経口投与します.
副作用:  比較的多い副作用は,手のふるえ,体のこわばり・つっぱり,口の渇き,尿が出にくい,便秘,目のかすみ,立ちくらみ,動悸など.また抗精神薬全般にいえますが,使用を続けることで,アカシジア(静坐不能)が出る場合もあります.アルコールや抗うつ薬SSRIのパキシルやリチウムとの併用は認められていません.
pzc 統合失調症に限らず,うつ病が深刻な症状を呈してきた場合,幻聴や幻覚,妄想を生じることもあります.この薬は,そのような脳内の情報伝達系の混乱を改善してくれます.主に,ドーパミンをおさえる作用により,陽性症状(妄想、幻覚、幻聴、混乱、興奮)によく効きます.また,うつ病でも見られる,陰性症状(感情鈍麻、思考・意欲減退)にも有効と考えられています.

 筆者の場合,2007年1月に,酷いうつ状態から抜け出せなくなってしまったので,抗うつ薬トレドミンを増強し,アモキサンは副作用が強かったのでストップして,このPZCを併用することになりました.トレドミンのようにノルアドレナリンに直接働くわけではありませんが,アドレナリン調節によって,意欲の向上を図る処方内容です.